入れ歯のお値段その3
40年ほど前、歯科大学の学生の時「恵ちゃんいいものを見せてあげる」と呉服屋の叔父、飾り棚にあったのはずらりと並んだ金属床、これはどこどこの歯医者で幾ら幾らかかったと説明を受けた後「どれも使えなくて仕方なくここに飾ってあるんだ」カラカラと叔父は無歯顎の歯茎を見せて笑った
それから数年後27歳の時に開業した、今から考えるといささか早かったようだ
開業して2年ほどしてある患者さんから手紙をもらった、作って間もない金属床と「私にはどうしてもこれを使えません」との内容が書いてあった
丁重にお詫びして返金した、同じ徹を踏んでいた
以来保険の義歯で勉強させていただいた、講習会や本でも勉強した
現在の方法にたどり着くのに長年試行錯誤が続いた、なんとか保険義歯である程度の成果を出せるようになった
総義歯は難しい、歯茎の厚さは均一ではない、歯茎の下の骨が尖っているとそこが圧迫されて痛くなる、歯茎がブヨブヨしていると義歯の安定が出来ない、小帯が土手の上までくっついている、唾液の量が少ないなど人によって口の中の状態はかなり違ってくる
全身状態に問題のある人、長年片側ばかりで噛んで筋肉に癖のある人、舌を前に出す癖のある人、顎関節が悪い人、反射の強い人、ブラキシズムをする人、性格が短気な人、神経質な人、妥協しない人、使用方法を守らない人、何度も同じ事を説明しなければならない人等等口の中以外にも様々の要因因子が多い
本当はもっと時間をかけたい、が今のままでは殆んど利益も出ない、報酬は自己満足のみ
・・他の仕事でもきっとあるんだろうな・・無償に近い報酬で奉仕してくださっている人達が・・我々も知らず知らずに恩恵を受けているのだろうな・・しかしそれでは将来に継承されない、特に医療では責任が問われる