ケイデン

八戸市伊藤歯科院長のブログです

2010年12月

政策を司る人達は現場の意見を広く聞くべきだ
小泉政権で入れ歯に補強線を入れるのを保険から排除した、どうなったか、壊れやすくなった入れ歯が出来る、苦情を言われるのは最前線の現場の我々なのだ
異議を唱えるべき団体も沈黙している、国に金が無いから補強線を入れないで壊れやすくなった入れ歯を作った、そのせいで益々入れ歯が壊れると作り直しや修理で益々多くの国のお金が使われる・・一体どうなっているんだろう
私は保険での日本製義歯が生き残っていくためには2コースを作るべきと思う
Aコースは今までどおりの決められた保険点数の予算内で作るもの、これには将来(もしかしたら既に?)中国製とかの無資格者が作ってどのような材料が使われているか不安な物が含まれる
Bコースは今までの5倍の保険点数内で作る製作者(技工士のナンバーを義歯に記入)の顔が見える物、日本の国家試験で認定された技工士が作った安全な物
この患者さんの負担金は全額の半分とし一定期間の使用後の返戻を認め(クーリングオフ)もし患者さんが気に入らなければ入れ歯を返してもらい返金する
この義歯では今まで維持装置や補強線そして義歯床の材料などで認めてもらえなかった高度な物を使えるようにする
2コース制度は取り外して患者さんが目で確かめる事が出来る義歯から始めていってクラウンブリッジにも段階的に範囲を広げていく
この義歯2コース制度、金属高騰で問題が生じ続けるクラウンブリッジでのハイブリッドレジンの保険適用、成長発育で重要な時期である小学生での矯正治療の保険適用・・これらは国の財政負担もそれほどかからないはずである、採用されれば歯科界特に技工士界は活性化していくはずだ

入れ歯のお値段その3
40年ほど前、歯科大学の学生の時「恵ちゃんいいものを見せてあげる」と呉服屋の叔父、飾り棚にあったのはずらりと並んだ金属床、これはどこどこの歯医者で幾ら幾らかかったと説明を受けた後「どれも使えなくて仕方なくここに飾ってあるんだ」カラカラと叔父は無歯顎の歯茎を見せて笑った
それから数年後27歳の時に開業した、今から考えるといささか早かったようだ
開業して2年ほどしてある患者さんから手紙をもらった、作って間もない金属床と「私にはどうしてもこれを使えません」との内容が書いてあった
丁重にお詫びして返金した、同じ徹を踏んでいた
以来保険の義歯で勉強させていただいた、講習会や本でも勉強した
現在の方法にたどり着くのに長年試行錯誤が続いた、なんとか保険義歯である程度の成果を出せるようになった
総義歯は難しい、歯茎の厚さは均一ではない、歯茎の下の骨が尖っているとそこが圧迫されて痛くなる、歯茎がブヨブヨしていると義歯の安定が出来ない、小帯が土手の上までくっついている、唾液の量が少ないなど人によって口の中の状態はかなり違ってくる
全身状態に問題のある人、長年片側ばかりで噛んで筋肉に癖のある人、舌を前に出す癖のある人、顎関節が悪い人、反射の強い人、ブラキシズムをする人、性格が短気な人、神経質な人、妥協しない人、使用方法を守らない人、何度も同じ事を説明しなければならない人等等口の中以外にも様々の要因因子が多い
本当はもっと時間をかけたい、が今のままでは殆んど利益も出ない、報酬は自己満足のみ
・・他の仕事でもきっとあるんだろうな・・無償に近い報酬で奉仕してくださっている人達が・・我々も知らず知らずに恩恵を受けているのだろうな・・しかしそれでは将来に継承されない、特に医療では責任が問われる

前々回のインプラントオーバーデンチャーの場合金属床にすれば軽自動車ではなく普通乗用車分の利益が見込まれると考える同業者は多いだろう
私は原則として金属床は作っていない
歯根膜負担から粘膜負担への変更、一度高額な費用をいただいたものが2~3年後にまったく使い物にならなくなるのは患者さんへの裏切りのような気がする
力がかかる残存歯がその後どの位耐えていけるか・・予測は難しい
レジン床の場合増歯やレリーフがやり易く作り変えた場合の患者さんの負担が少ない
金属床、レジン床それぞれの利点欠点を考えて提示すべきだと思う
それにしても保険義歯の点数設定はあまりに過小評価で歯科医師、歯科技工士に対しあまりに失礼な価格だと思う
可動する部分、可動しない部分をそれぞれ材料の特性を熟知し模型上に再現しそれを三次元的に患者さんの骨格、長年の噛み癖や力、嗜好、ライフスタイルまで考慮して歯を並べる
こんな難しくかつ面白い仕事は無いのだが、時間や材料をかけるほど赤字に陥っていく
またニ、三千円で手に入れた物だと患者さんも大切にしてくれない、粗末に扱われる事もある
また作りなおせばイイヤという考えになり易い
日本の保険義歯の患者さんはある意味恵まれている・・今は・・
昨年中国人の方の義歯を見る機会があったが恐ろしい代物だった
近い将来日本では利益が上がらず感謝もされない義歯を一生懸命作ってくれる技工士はいなくなろだろう
レアアースと同様かの国のご機嫌を伺いながら保険の義歯を輸入することになる、・・間違いなく・・

ある患者さんの下顎にインプラントを入れそこは固定性ブリッジを入れ数十万円の費用をいただきました
しかし上顎は骨が吸収しており上顎洞までの距離も短くご高齢なせいもありインプラントは断念しなんとか最大限の努力で作った保険適用の義歯を使っていただきました
今でも目を閉じると反対咬合で前歯部の顎堤は無く臼歯部の僅かばかりのアンダーカットを頼りになんとか入れ歯の落下を防ぐという超難症例の状態が思い出されます
それでも旧義歯に比べるとある程度の満足をいただきました
その方、話に興が乗ると上の入れ歯をはずしてやにわに・・「この入れ歯幾らかかったと思う? 伊藤歯科で作ったんだが実は400万円かかったんだよ・・・」
ということだったらしく皆さん真に受けたようです
はずれない入れ歯を入れたかった気持ちの裏返しがそう言わせたのかもしれません
受付が「おたくで入れ歯を作りたいんだけど幾らかかりますか?」というお電話をいただいた中に「何百万円もかかるんですか」という問い合わせがありました
その患者さんがご他界された後に事の真相がわかりました
宣伝をしていただくのは誠に嬉しい限りですが、どうか本当の事を・・と切にお願いする次第であります
当院では保険適用の入れ歯も誠心誠意作らせていただいております

先日インプラントオーバーデンチャーの講演に行ってきましたので私の症例をご紹介します
上顎に4本のインプラントとマグネット、下顎前歯部に4本のミニインプラントにホック方式でそれぞれ維持を求めています(上顎は無口蓋義歯)
この方は1本も歯は残っていませんが顎堤もしっかりしており、旧義歯である程度の吸着はありました、しかし・・八戸センベイもアワビも十和田牛ステーキも噛み切って味わいたい・・大きな口を開けて笑い人前で話したい・・入れ歯が落ちる心配をせず、美声を披露したい・・これからの残りの人生を以前に歯があった時のようなQOLを患者さんが求める場合インプラントを使った義歯が必要になってきます
約10ヶ月の治療期間と軽自動車一台分の費用で可能になりました
これを義歯ではなくクラウンブリッジでのインプラント治療で行えばいったいどれだけ高額の費用がかかるでしょうか
今後のメインテナンスが良好であれば十分快適な残りの人生が楽しめます
また新義歯が入るまで下顎は旧義歯を利用して一定の維持が得られました
確かに費用は少々高額です、しかし以前に紹介した癌検診や癌治療でのお話を思い出して下さい、残念な事ですが保険治療の範囲だけでは限界があります
値段が高いか安いか、それぞれの人の価値観の違い・・だと思います
保険適用外で費用はかかりましたが、この患者さんには大変満足していただけました
最後に当院では多くの症例は保険適用での義歯での提供をしています事を付け加えさせていただきます
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11月27日に八戸歯科医師会の学術講演会が行われ講師の青森市で小児歯科を開業されている土岐志麻先生の話を聞きました
2.3年前に県歯で講演を聴く機会があり是非八戸でもと思っていました
障害児の歯科治療は本当にてこずる感がありますが先生は時間をかけ辛抱強くそして何より母のような愛情を持って診療に携わっています
やはり女性の持つ慈しみの面では我々男性はかないません
札幌でこの分野の専門を進んでこられた知識もさることながら障害児を持った母親への気遣いや励ましなど女性としての視点を診療に取り入れられており、その診療内容は参考になるばかりか、ここまで熱心に考えているのかと頭が下がるほどのものです
忘れていた歯科医師の原点を思い出させてくれました
その情熱パワー溢れる講演の後、懇親会、二次会とお付き合いさせていただきました
美味しそうにお酒をいただく素顔の面も見られ楽しいひと時でした
(二次会で大間産のマグロが出ました)
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